2021年 下期 総合カタログ スガノ農機 株式会社
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200000400006000080000100000198519901995200020052010なぜ乾田直播では被害が出ないの?乾田直播はジャンボタニシの防除対策に効果あり。POINT●ジャンボタニシは発芽直後~2、3葉期の柔らかいイネを好む●乾田条件ではジャンボタニシは活動できない●入水時にイネは4~5葉期になるので、食害に遭わない●スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)とは?スクミリンゴガイ(リンゴガイ科)、通称ジャンボタニシは、南米ラプラタ川流域原産の淡水巻貝で、成貝の大きさは殻高2~7㎝程度で最大で8㎝ほどになります。在来のタニシ(タニシ科)との見分けが難しく、殻の色は黄褐色~黒褐色です。14℃以下では活動を停めて、泥の中(約8割が地表から深さ6㎝以内)に潜って越冬し、気温が上昇すると活動を開始します。日本には1981年に食用目的で持ち込まれ、大量養殖が試みられました。しかし流通には至らず、水田や水路に定着したと言われています。雑食性ですが、特に軟らかい植物を好みます。田植え直後のイネを食いちぎり、水面に浮かぶ葉を引き込むように食害するので、収量に大きく影響することがあります。●被害状況とその要因は?獰猛な食欲で、田植え直後のイネを貪るジャンボタニシによる食害は、九州を起点とする西南暖地に留まりません。近年は温暖化の影響を受けて千葉県など関東地方にまで生息域が拡大しています。とくに2019年12月~2020年2月は記録的な暖冬だったため越冬個体が多く、さらなる蔓延となりました。河川や水田に定着したジャンボタニシによるイネの食害は1984年に初めて報告され、翌85年より農林水産省で防除対策が検討されてきました。その当時、被害が広がっていた九州ではある程度対策が講じられ、その後は被害面積が抑えられていきました。2020年は、田植え期間に重なった集中豪雨が食害被害増長の要因になり、一晩で苗が食べ尽くされ、再度の移植を余儀なくされるほ場が多く発生しました。生息域の北限は茨城県北浦といわれていますが、今後、北上あるいは周辺地域に拡大していく可能性も否定できません。まだジャンボタニシの生息が確認されていないほ場でも、近隣の食害発生状況を踏まえて、栽培方法の変更を含む対策を練っておきましょう。●イネが生育してから入水するので、 乾田直播のほ場では食害を回避できますジャンボタニシの対策において最適な選択肢は、乾田直播で栽培することです。播種から3葉程度までは、ほ場が乾田状態なので貝の活動を抑えられます。さらに、入水時には4~5葉に成長しているので、地下の泥の中にジャンボタニシが生存していても茎が硬くなっているイネは食害に遭いません。落水期間中に圃場の一部に水たまりができると、ジャンボタニシが動き出して食害が進行してしまうので、ほ場の均平化がポイントになります。なお、湛水直播では出芽時に湛水状態が継続しているため、幼苗をジャンボタニシが好んで食べてしまいます。ほ場内の個体が少なくても著しい被害が生じることが懸念されます。営農情報ジャンボタニシの防除対策(乾田直播編)移植栽培では被害を受けているけど、乾田直播のほ場では発生していないし、    ジャンボタニシが食べてくれるからなのか、雑草も少ない 【愛知県・尾崎大作様】乾田直播だと入水時にイネが10㎝程度に大きくなっているのでやられない 【岡山県・奥山孝明様】<参考文献・引用文献>※1 九州沖縄農業研究センターのWebページ「スクミリンゴガイ」 http://www.naro.arc.go.jp/laboratory/karc/applesnail※2 千葉県農林水産部「ジャンボタニシの防除対策について」  ※3 国立環境研究所侵入生物データベース「スクミリンゴガイ」※4 和田節(2015):スクミリンゴガイの日本における発生状況と農薬による水イネの被害回避における問題点,植物防疫第69巻第3号p147-151食害により、一晩で苗が無くなったほ場水田におけるジャンボタニシ発生面積の推移(※4)全国九州・沖縄(ha)(年)(※2)●冬季平均気温偏差(12月~翌2月)実践者の声 年 北日本 東日本 西日本 沖縄・奄美 2010~11 0.6 0.2 -0.4 -0.8 2011~12 -1.3 -0.9 -0.7 0.0 2012~13 -1.2 -0.8 -0.7 0.4 2013~14 0.2 -0.2 -0.1 -0.3 2014~15 0.8 -0.2 -0.2 -0.2 2015~16 1.0 1.4 1.0 0.5 2016~17 0.5 0.8 0.8 1.1 2017~18 -0.4 -0.7 -1.2 -0.3 2018~19 0.4 1.1 1.3 1.8 2019~20 1.2 2.2 2.0 1.3冬の平均気温 平年差(℃)ジャンボタニシの卵塊(※2)※気象庁地球環境・海洋部101

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