2021年 上期 総合カタログ スガノ農機 株式会社
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 輪作や堆きゅう肥の投入が忘れられています。手を掛けて堆きゅう肥を作る農家は非常に少なくなっています。 そのために収量の低下を必要以上の化学肥料でカバーする。その繰り返しで、土はどんどん疲弊しています。化学肥料の連投は、当初は多収でも50年後には無肥料区より低収になっていく。まるで、定期預金を使いはたし、借金に金利を支払うようなものです。 緑肥は品種を選び、適期栽培を行えば堆きゅう肥以上の力があるといわれています。また適切な手段を使えば手間【表2】化学肥料の多投と有機物不足(地力の低下)堆きゅう肥+化学肥料区堆きゅう肥専用区化学肥料専用区無肥料区02550(年目)ローザムステッド農場における肥料試験の経過生産量及び微生物数【表3】野菜の収量と農薬代の産地間比較(10a当り) 相馬、北海道有機農技研報(1991)夏獲りキャベツダイコンバレイショ産 地北海道群 馬北海道兵 庫北海道長 崎収 量5,4505,7183,5372,8033,7102,610kg農薬代3,14743,3725,86732,3277,85312,433円2. 脱化学肥料万能、挑む緑肥作導入土を生きた生物の母体として育てよう3. 脱土壌消毒、挑む生態系連携自然の生態系連携で、土を鉱石の粉にしない仕組をつくろう 化学肥料は、それを分解する微生物がいて効果を発揮します。太古の昔から土を作ってきたのは、微生物を中心とした動物達。化学肥料万能で単一作物が栽培されると、連作障害が発生し、仕方がないから本来必要の無い土壌消毒剤を撒くことになります。 その繰り返しにより、自然を征服しようとしたシッペ返しを受けているのではないでしょうか。 表3は収量と農薬代の産地間の比較です。どちらが健全で永続的経営か一目瞭然です。経済協力開発機構(OECD)が出した日本の環境政策についての報告によると、90年の農地1平方キロメートル当たり農薬使用量は、米国0.2トン、フランス0.5トン、イタリア0.8トンなど1トン未満に対して、日本は1.8トンと群を抜いています。 有機物を土に鋤込み、多種多様な微生物の繁殖を旺盛にし、バランスがとれた状態を維持する。その結果として相互に静菌作用が働く環境を造ることが大切なのではないでしょうか。 自然の生態系連携で、土を鉱石の粉にしない仕組をつくろうではありませんか。 企業は生き残りに無人化・自動化で挑んでいます。農業においては、タダの太陽、タダの空気、タダの雨水、タダの微生物等、このタダのものを上手に利用し、連携してこそ盤石な基盤が出来上がります。この仕組みの中にこそ、永続的な農業が根づくのではないでしょうか。 フランスのセーヌ河畔のほ場では、200羽を超えるカモメがプラウ作業をしている畑に群をなして飛んできていました。彼らにとって又とない餌が沢山あるのでしょう。この畑は、100年も続いた農地で重粘土質とのことでしたが、手で握るとパラパラ崩れるのです。 プラウ耕の後は、ハローを1回掛けるだけで種を播くことができ、湿害も干害も受けることのない畑であるとのことでした。これこそが積年良土であり、タダの太陽、タダの空気、タダの雨水、そして何より無給で働いてくれるタダの微生物と連携した永続的な農業のモデルといえます。プラウ耕の後を、ミミズ等を食べに群がってくるカモメ(フランス)1. 脱売上思考、挑む収益思考タダの太陽、タダの空気、タダの微生物との連携で、栽培の基盤づくりも掛かりません。あるいは雑草に肥料を与えて大きく育てて種子のできる前に鋤込む。このような低コストな土づくりもできるのです。 土は化学肥料の増量材ではありません。土を生きた生物の母体として育てましょう。117

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